吃音と似ている「場面緘黙症」、「失語症」、併発しやすいSAD(社交不安障害)、鬱とは

吃音と症状の一部が似通うために混同されがちなものとして、場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)、失語症が挙げられます。いずれも流暢に「話す」ことができないという点が共通しています。

また、吃音を持っている人が併発しやすいものには、SAD(社交不安障害)と鬱があります。こちらは吃音そのものというよりも、「うまく話すことができない」というストレスや「失敗したらどうしよう」といった不安、劣等感などが共通しています。

場面緘黙症とは

場面緘黙症とは、自宅で家族と過ごしていると滞りなく話すことができるにもかかわらず、ある特定の場面では話すことができなくなる(声が出なくなる)症状を言います。

選択性緘黙症と呼ぶこともありますが、当人が場面を選んで話したり黙ったりできるものではありません。言語の理解や発語する能力には問題はないとされ、発症する原因やきっかけ、発症率なども定かではありません。

これには、幼少期に発症することが多いものの、人見知りや引っ込み思案といった性格的な特徴と区別がつきにくいことも影響しています。性格的な問題と異なる点は、症状が明らかに強いまま長期にわたることです。多くの場面緘黙症は行動療法などにより改善するようですが、早期の治療が重要です。

失語症とは

失語症とは、主に脳出血や脳梗塞、脳腫瘍などの障害により脳の言語を司る部分が損傷し、以前のように話して表現することや聞いて理解すること、読み書きなどができなくなることです。

それらがはじめからできないのではなく、一度は獲得された言語が障害により表出できない状態です。発語するための唇や舌、口蓋の筋肉などに異常はありません。

失語症は、言語を理解していても発話や書字に大きな障害をもつ「運動性失語症」と、理解自体が損なわれている「感覚性失語症」の二つが代表的です。

その他、理解や発語も比較的できるものの言葉が出にくくなる「健忘性失語症」、いずれもほぼできなくなっている重症の「全失語症」があります。失語症はリハビリテーションにより回復を目指します。

それぞれの違い

まず症状として、場面緘黙症や失語症においては、初期の吃音によく見られる連発や伸発が起こりません。緘黙症は、話せるときは流暢に話せますし、話せない場面では沈黙します。失語症では発音の乱れが見られることもありますが、やはり吃音とは異なるものです。

発達性の吃音と場面緘黙症は幼少期に出やすく、獲得性の吃音と失語症は成人してから、特に失語症は中高年に多い障害です。吃音と緘黙症は原因が明らかでなく、失語症は原因も症状も幅広いため、専門家による診断と治療、リハビリテーション、サポートが不可欠と言えるでしょう。

SAD(社交不安障害)とは

SADは社交不安障害のほか、社会不安障害、社会恐怖などとも訳されます。人前や人の多くいる場面で、不安や緊張のためにするべきことができなくなってしまう、苦痛のあまりその場面を避けてしまう(実際には避けないこともあります)ことを言います。

人前で緊張するのはよくあることですが、SADの場合は生活に支障が出るほどの、極めて強い不安を感じます。また、SADでない人にとってはさして緊張するような状況でなくとも、不安にとらわれてしまうこともあります。人前で話せない、思ったことを発言できない、人の集まる場に行けないなどのほか、人目のあるところで食事や電話ができないといった例もあります。

治療法は、主に薬物治療と認知行動療法の二つですが、当人や周りの人が「性格の問題」と思い込み、治療の機会を逃しているケースが多くあります。

鬱とは

俗に「鬱(うつ)」と呼ばれる「うつ病」は、気分が落ち込みやすくなかなか戻らない、何をするにも億劫でやる気が起こらない、食欲がないなどの「抑うつ状態」が続く上に、慢性的な頭痛や不眠、疲労感などを伴うこともある症状のことです。

また、自己肯定感が持てず、自責心や劣等感が募り、仕事や日常生活を送ることが困難になる場合もあります。

昔に比べ「気の持ちようで治る」というような誤解は減りつつありますが、「こころの風邪」と呼ばれることもあるうつ病は、遺伝的要因・環境要因・身体的要因が複雑に絡み合って発症するもので、心因性とは限りません。

SAD、鬱、吃音の治す順番について

SADやうつ病による強い不安、緊張または自己否定や劣等感が、吃音を引き起こしたり悪化させたりするケースがあります。

そういった場合には、SADやうつ病を優先して治療しましょう。「吃音の治療」が精神的な負担となり、SADやうつ病を悪化させてしまっては元も子もありません。

結果的に起こっている吃音から対症療法的に治療するのではなく、要因となっている根本的な部分からケアしていきましょう。

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