薬物療法と言語聴覚フィードバックの問題点

吃音の薬物療法には、主に抗うつ剤や抗精神病薬などが用いられています。薬物療法の問題としては、まず科学的根拠が十分とは言えないことが挙げられます。

理論上は有効と考えられるものでも、そもそも吃音の原因自体が千差万別であることから、人や場面によって効くこともあるし効かないこともある、という程度だとも言えるのです。そして、それぞれの薬の副作用や依存性の心配もあります。

言語聴覚フィードバックの問題も、いくつかあります。言語聴覚フィードバックは自分の声を聞きながら話すため、始めの言葉を出すことが困難な難発性吃音の方には効果が期待できません。それから、一方的に話すことのできる場面では有効ですが、言葉をやりとりする会話の状態では活用が難しいのです。また、機械を常に装着していなければなりません。

薬物療法にも言語聴覚フィードバックにも共通することとして、日本国内では手に入りづらかったり、高価になってしまったりすることも問題と言えるでしょう。

薬物療法の種類

吃音で処方される薬の種類としては、次のものが多いようです。抗うつ剤である「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」。商品名としてはパキシル、ルボックス、ジェイゾロフトなどがあります。抗不安薬・精神安定剤ではデパス、メイラックスが代表的です。βブロッカー(ベータブロッカー)という薬では、インデラル、テノーミンなどがあります。

しかしながら、いずれも吃音専用の薬というわけではありません。現状では、「吃音にはこの薬」という明確なガイドラインがないのです。それぞれの医師の判断に応じ、緊張や不安、興奮などを緩めるための薬を処方されているに過ぎません。そのため、症状を緩和することはあれど、吃音の根治に結びつくとは言えません。

SSRIの副作用と問題点

「SSRI」は重篤な副作用はほぼないと言える安全性の高い薬ですが、起こりやすい症状として次のものがあります。

まず、吐き気、嘔吐。時には下痢を伴います。SSRIの副作用は消化管に出やすい傾向があるのです。症状が重い場合には、胃薬の併用や減薬、変薬により対処します。

次に、眠気と不眠です。どの程度出るか、どちらが強く出るかは個人差があります。そしてめまいやふらつき、頭痛、口の渇き、便秘(尿が出づらくなることも)などもしばしば見られるほか、性欲の低下や性機能障害、焦燥感やイライラ、程度は低めですが体重増加、不整脈などが起こることもあります。

問題点は、主に飲み始めの時期に上記のような副作用が見られることです。不安感や強迫観念を和らげ吃音を改善するはずが、睡眠不足や体調不良などで追い詰められてしまっては本末転倒でしょう。しかし、いずれも服薬を継続し、体が薬に慣れるとともに落ち着くことが多いので、焦らずに主治医と相談しながら調節していくことが重要です。

抗不安薬・精神安定剤の副作用と問題点

抗不安薬の代表的なものにデパスがあります。デパスは不安を和らげるほか、筋肉の緊張を緩める働きもあり、心身をリラックスさせてくれます。

その副作用として、眠気や倦怠感を感じる、めまいやふらつきを起こす、物忘れが激しくなることなどがあります。集中力の必要な作業や運動はできる限り避けたほうがよいでしょう。

転倒しやすくなるため、筋力の弱い高齢者の方などは特に注意が必要です。また、依存性の高さも問題点のひとつでしょう。仮に吃音が軽減されても、服薬をし続けることにはこのようなリスクが常に伴います。

βブロッカーの副作用と問題点

βブロッカーは、心筋収縮力を低下させ心拍数を減らし、血圧も下げる作用があります。日本では心筋梗塞や高血圧、パニック障害などに処方されることの多い薬です。

心拍数を抑えるため、副作用として低血圧、倦怠感、体の冷えなどがあるようです。不眠や強い吐き気といったものも挙げられるため、吃音の改善が見られたとしても、長期にわたって服薬を続けることは難しいと言えそうです。
また、心機能に疾患のある場合など、処方できないことがあります。

言語聴覚器の種類

「DAF」は「Delayed Auditory Feedback」の略で、「遅延聴覚フィードバック」という機械と治療を示す言葉です。

DAFでは、発話するユーザーの声を、マイクとヘッドホンを通してユーザー自身の耳へ届けます。その際、少し遅らせた音声を送ることで、吃音の改善に有効とされる「二人読み効果」を擬似的に作り出すのです。「FAF」というものもあります。

こちらは「周波数変換フィードバック」という意味で、声のピッチを変えることで音の高低も変わり、自分自身のものでないような声が聞こえる仕組みになっています。
また、「DSA(Digital Speech Aid)」=「吃音抑制訓練器装置」という機械もあります。

言語聴覚フィードバック法の問題点

最大の問題点は、機械を装着している間しか効果が得られないことです。職場や冠婚葬祭などの場面でもヘッドホンとマイクを着けている必要があるというのは、想像以上にハードルが高いようです。この装着が高価であることや、日本国内では簡単に買えないことも、使いづらい理由と言えるでしょう。

また、最初の言葉を発することのできない難発性吃音の場合「フィードバック」が行えず、効果がありません。話し始められた後も、常に自分の声を聴きながら話すため、話し方が遅くなったり、抑揚のないやや不自然な発声になったりしてしまいます。

相手の話に集中しづらいとも言われています。その影響もあり、スピーチや文章を読み上げる際には効果を発揮しやすいのですが、日常的な会話の場面ではなかなか難しいようです。

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