吃音の治療方法ってどんなのがあるの?

吃音にはさまざまな治療がありますが、「これさえ行えば誰でも必ず治る」という万能な方法はありません。

身体的なトレーニング、話し方の工夫、脳への働きかけ、心理的なサポート、他者とのコミュニケーションなど、複数面からの包括的な治療が望ましいとされています。具体的には後述しますが、いずれも短期間で改善させるのは難しいため、焦らずにじっくりと取り組むことが大切です。

また、まずは吃音について正しい知識を持ち、理解を深めることも重要でしょう。知らずにいる、あるいは誤解しているために、悩みやストレス、不安を過度に抱えこんでしまうケースも少なくありません。

発語トレーニング

昔から吃音治療には「腹式呼吸」と言われてきましたが、同時に、その効果を疑う声も挙がり続けています。人によっては「腹式呼吸をしながら話さなければ」という意識が緊張を上乗せし、吃音が悪化することもあるようです。

一方で、いきむ動作で呼吸が止まり、筋肉が緊張する「バルサルバ反射」が吃音を引き起こしているタイプの方や、不安で呼吸が浅くなりがちな方には、腹式呼吸は有効であると考えられています。

発声練習にも注意が必要です。闇雲な音読練習で発語への緊張を高めてしまったり、苦手意識を持ってしまったりしては逆効果です。言語聴覚士による治療でよく用いられる「SOV(Soft On Voice)法」では、ゆったりとやわらかく、単語の最初の母音を少し伸ばしながら発声します。

「ぉーーはよう」「こぉーーんにちは」など、強引に絞り出すように話すのではなく、リラックスして無理なく発声できるようにするものです。
マウスピースによる矯正は、舌の位置の調節や筋力不足のトレーニングなどを名目としていましたが根拠に乏しく、現在はあまり行われていないようです。

言語聴覚フィードバック

吃音は、一人きりで話すよりも、他の誰かや大勢の人と声を合わせて話すほうが出づらいということがよくあります。「二人読み効果」とも言います。これを利用した機器と治療方法が「DAF(Delayed Auditory Feedback)」=「遅延聴覚フィードバック」です。

自分の発した声がマイクとイヤホンを通じて自分の耳に届くもので、複数人で話している状況に近づけることができます。難発性吃音の方や「会話」の場面では効果が認められないこと、話し方のテンポが遅れること、装着していないと効果が得られないこと、機器が高価なことや目立つことなど、欠点もあります。しかし緊張の緩和などにより、吃音が改善されることもあるようです。

「FAF(周波数変換フィードバック)」はフィードバックする自分の声のピッチを上げた装置です。現在、日本国内では販売されていません。また、「DAF」とほぼ同様の欠点があるそうです。今はスマートフォンのアプリやインターネットで体験できますので、試してみるのもよいかもしれません。

バルサルバ反射抑制法

呼吸を止めて力を入れる動作により、心拍数が上がり筋肉は緊張し、通常よりも筋力を発揮できる生理現象を「バルサルバ効果」と言います。

「バルサルバ反射」とは、その効果の表れる筋緊張が、意図していないにもかかわらず反射的に、それも頻繁に起こる場合を指します。胸部や腹部、咽頭、唇や顎の筋緊張も高めることから、一部の吃音者の、吃音の原因になっているという説があります。

「バルサルバ反射抑制法」とは、腹圧を上げて副交感神経の働きを高め、緊張をほぐすことで吃音を緩和させるという訓練方法です。ただし、反射的に起こってしまう緊張や硬直を緩めることは簡単ではないようです。

薬物治療

吃音の薬物治療においては、抗うつ剤である「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」やドーパミン拮抗薬などを使用することが多いようです。

吃音の原因の一つに、脳の代謝物質であるドーパミン、セロトニンという神経伝達物質の分泌量が不安定になることが挙げられます。吃音の症状が表れているとき、脳はドーパミンを過剰に分泌しているのだそうです。

ドーパミンが増え過ぎると脳は興奮状態となり、吃音の症状も悪化しやすくなります。それに歯止めをかけるのはセロトニンの役割ですが、ストレスがかかるとセロトニンの分泌量は減少してしまうのです。「SSRI」にはセロトニンの分泌量を正常に近づける働きが、ドーパミン拮抗薬にはドーパミンの作用を弱める働きがあることから、治療に用いられています。

セラピーや催眠療法

セラピー、催眠療法とは、人の潜在意識へとアプローチし治療を目指す方法です。セラピストや催眠療法士のカウンセリングなどにより、緊張や予期不安を和らげ、症状を改善させるそうです。

「吃らないように話さなくては」という意識に囚われてしまったり、人と会うことにすら恐怖を覚えたり、吃音をからかわれたなど内面に傷を負っていたりする場合、癒やされ、前向きな気持ちになれるようです。また、「吃音があってもいい」と、吃音の症状ごと自分自身を受け入れることで焦りがなくなり、生きやすくなるというケースもあるようです。

マインドフルネス

近年、アメリカでの流行がきっかけとなり、「マインドフルネス」によって吃音の改善を期待できると話題になっています。マインドフルネスとは、その人固有の思考の癖(「認知の歪み」)に気づき、整えようとする瞑想法です。自分自身の心や体の動きを客観的に認識することで、予期不安や緊張を軽減したり、それによる吃音や随伴行動を改善したりできると言われています。

瞑想は呼吸を重視します。マインドフルネスにおいても、鼻呼吸での呼吸の練習法が勧められています。吃音の出やすい場面を前にしても「吃ったらどうしよう」という不安に集中するのではなく、自分がどのように呼吸し、思考し、筋肉を動かしているかを自ら観察することで、状態を変えていけるそうです。

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